二水会部
● 7 月の報告●
日 時 : 7 月 13 日(水)午後 8 時より
講 師 : 富田英揮様
演 題 : 証券取引所の役割・最近の動き
会 場:ZOOM スクリーン上 参加人数:35 名
7 月の二水会部は、日本証券取引所の富田様をお招きしました。 東京証券取引所(東証)と聞くと馴染み深いですが、大阪証券 取引所と合併して、名称が変わったことをご紹介をいただきま した。富田さんが入社した頃の立会場の写真と共に、ワイシャ ツ代・クリーニング代が支給されていたとのお話を聞き、昔テ レビで見たり聞いたりした、取引所の賑わいの記憶が蘇ってき ました。バブルの頃には、僕の母親も「財テク」という言葉が ならんだ雑誌を買っていたことや、NTT の株式が上場したこと などを思い出しながらお話を聞きました。現在の取引所は、人 の姿がなく、売買システムが重要な役割を担っていて、その場 所も非公開とのことでした。今の時代は、人よりも (?) システ ムが重要になっているということを実感させられるお話でした。 日本の証券市場での日々の売買の 60% は外国人投資家が占めているということで、「日本の市場は外国人投資家が動かして いるというのは本当です」というお話は、個人的には以前から 聞いていましたが、改めて印象的なお話でした。また、「アメリ カの写真相場(アメリカの相場に追随して日本の相場が動く) と言われるのも、おそらくその通りです」ということは、やっ ぱりそうか、と少し残念な気がしました。 証券取引所の業務の紹介では、僕の仕事の会計・監査と関連 する事項が少なからずあり、身近に感じました。東証株価指 数が 1950 年に始まったこと、1985 年にデリバティブの取引が始まったこと、1998 年から証券取引所を通さない売買が認め られたことなど(金融ビッグバン)、歴史のお話は興味深く聞き ました。
金融ビッグバンにより、日経 225 先物取引についてシンガポー ル取引所が大阪取引所と五分五分の競争をしていて、これは、 先物取引の法律整備が日本で遅れたために、シンガポールに 先を越されてしまい、先に始めたところが大きなシェアをとる ということでした。また、アメリカのナスダック(取引所)などは、 使用しているシステムを海外に輸出していて、日本のデリバティ ブ取引のシステムもナスダックのものを使用しているということ でした。さらに、ロンドン証券取引所は、収益の8割が情報サー ビスで得ていることから、日本から見ると、もはや取引所では ないというお話もありました。欧州の現在の動向としては、デー タのプラットフォームを作る、グローバルスタンダードを獲得す る争いが行われているということで、そこかしこで、「取引所間 の競争」が起こっていることを感じました。 質疑応答では、合併が進んでいった場合、小さな取引所は残 る可能性があるのかという質問がありました。今後まだ合併・ 大規模化が続く可能性は高いものの、現在では国家間の動向 により、合併ができない事例も出てきており、政治的な要因も働くことが明らかになってきて いるとの話がありました。また、 日本取引所は民間の会社である ことや、インサイダー取引は厳し く取り締まられること、 日本 取 引所の社員は株式の売買自体が 禁止されていることもお話いた だきました。 その他、ロシアの証券取引所は、 システム化の進んだ近代的取引 所であること、直近のウクライ ナ侵攻で、取引所業界から除名 をされて国際的な活動はできな い状態であることのお話もあり ました。日本の市場は、日本取 引所の取引シェアが9割である こ と に 対 し て、 ロ ン ド ン 取 引 所 の国内取引のシェアは5割~6 割という違いから、日本では政府の意向が働きやすい傾向があるのではないかとのお話も印 象的でした。 興味は尽きないお話でしたが、世の中がどのように変化してい くのか、日本や英国はどうなっていくのか、激動の時代に向か いつつあると個人的には感じている中で、二水 会部幹事の「特権」を生かして、未来を探って いきたい、そう感じた講演でした。(伊東ノリ)