謹賀新年

英国日本人会の皆様へ、新年の御挨拶

令和 6 年1月 在英国日本国大使館 総括公使兼総領事 英国日本人会名誉会長 孫崎 馨

日本人会の皆様、遅ればせながら新年のお慶びを 申し上げます。 昨年は、日本がG7の議長国だったこともあり、 日英両国間では非常に要人往来の活発な一年でした。 今年も早速河野太郎デジタル大臣、新藤義孝経済再 生等担当大臣と日本からの閣僚の訪英が相次いでい ます。辰年にふさわしい、ダイナミックな年になる ことを願っております。

しかし、やはり、今年については、能登半島地震 について申し上げないわけにはいきません。といっ ても、亡くなられた方の御冥福をお祈りし、被災者 の方々への寸志をお送りするくらいのことしかでき ないのですが、私は、両親が石川県の空港のある小 松という町の出身で、生まれたのも、また、中学 ・ 高校も石川県です。でも、旧国名で言えば加賀なの で、能登の何が語れるわけでもありません。被害に ついて、ネットでいくらでも御覧いただけるものに 付け加えるほどの言葉も持ちません。ただ、この季節の災害は本当にむごいことだと思います。もちろん、時宜を得た災害などというものがあるわけではないわけですけど。

北陸の冬は、本当に憂鬱です。天気の悪さはほとんど英国の枕詞ですが、北陸の冬は「憂鬱」の枕詞にして欲しいくらいです。実は、(本稿執筆時点での)先週末、イーストミッドランド日本人会の新年会に御一緒させていただきました(このあと中部日本人会にもうかがう予定です)が、昨年秋に着任してから、郊外に出たのが初めてなので、この季節でも緑が広がる車窓からの田園風景には心洗われました。その点、北陸の田園風景は基本的には田んぼですので、冬場は茶色いか、雪が積もって白いか、でも、その白も徐々に泥で汚れていく、という感じです。晴れていれば別段、海も灰色ですし、遠景の山々も木々は葉を落としていますし、いずれにせよ、色がなくなる印象なのです。英国の冬は確かに気が滅入るものがありますが、滅入ったときに無理に上を向くからつらいのであって、下の緑に目を向ければ、多少の救いはある、と思います。

もっとも、北陸の冬にも救いはあります。寒ブリ漁が再開するといったニュースも流れていましたが、冬場の海産物は天気の悪さに耐える人々への御褒美かもしれません。被災者の方々の日常が一日も早く戻ること、そして皆様にとって良い年であることを願って御挨拶とさせていただきます。